TOMMY’S RECORD初のCD「NY RENUNION」について、シリーズで紹介します。プロデューサーとして構想から完成まで、全てに関わりましたので、その貴重な体験を紹介させていただきます。

「その①」は、発売中の「NY RENUNION」のライナーノーツの紹介です。(なお、「その②」は、CDが完成するまでの手続きを紹介の予定です。)

 

 

 

 

その①:ライナーノーツ(全文)

夢が叶って、初めてプロデュースしたCDにより、正統派バップ・ピアニストの友金まゆみさんと気鋭の若手ベーシストの大塚義将さんを、全国のジャズ・ファンの皆さんに紹介できることを、心から嬉しく思っています。

タイトルを「NEW YORK REUNION」と名付けたのは、このトリオの3人が、2010年と2011年に横浜で共演し、今回のニューヨーク録音が3回目の共演となることに因んでいます。

<友金まゆみさんについて>
友金まゆみさんの米国時代を中心とするプロフィールは、後述のとおりですが、
猛者が集まるセッションで有名だったニューヨーク、マンハッタンの105丁目にあった「オーギーズ」のハウス・ピアニストとして、日本でブレイクする前の大西順子さんと交代で出演していたという実力派です。

NHK Eテレの「SWITCHインタビュー 達人達」という番組の中で、大西順子さんがニューヨーク時代を振り返っていました。
「レジェンド達がまだ活躍していた時代にぎりぎり間に合い、一緒に演奏できたことが一番の思い出。」と語り、「一流ミュージシャンの演奏を目の前で見て、出てくる音を聴いて、これは敵わないと思った。」、「その時に見てしまったものは一生消えない。これからも、忘れずに生きていきます。」と結んでいました。

友金さんが、折に触れ語ってくれる当時の話から、「友金さんも、同じような思いだろうな」と感じました。女性ミュージシャンが少なかった時代、ジャズの本場での研鑽の日々の苦労は、並大抵ではなかったに違いありません。レジェンド達に鍛えられ、必死で努力し身につけたものが、友金さんの演奏スタイルとなったわけで、彼女のホームページに「ニューヨークで学んだ事を、できるだけ多くの人に伝えたい。」とあるのも当然の思いでしょう。

友金さんは、その実力や米国時代のキャリアに比して、全国レベルでの知名度は高くないかもしれません。これは、家庭の事情から、しばらく引退されていたこと、また復帰後も、受け継いだ音楽学校の運営があるため、ライブ活動が、地元横浜が中心となっているためです。
今回、思い切ってCD制作に踏みきったのは、私が「バップ魂のピアニスト」と呼んでいる、師匠のマッコイ・タイナーを時に彷彿とさせる力強いタッチで、バッド・パウエルから連綿と続くバップ・スタイルを大切にする彼女の演奏を、全国のジャズ・ファンの皆さんに知ってもらいたいと思ったからです。「バップ魂のピアニスト」の演奏をお楽しみください。

<大塚義将さんについて>
横浜での共演時は、大学を卒業して間もなかった大塚義将さんですが、その後、サックスの多田誠司さんのバンドメンバーとしてキャリアを重ね、自身のリーダートリオや若手グループ「.Push」での活躍など、今や売れっ子ベーシストです。

私が、友金さん・大塚さんと知り合ったのは、定年退職を目前に控え、念願だったジャズ喫茶の開店準備をしていた2014年でした。
それ以来、友金さんのトリオやデュオの演奏を何度も聴き、ベーシストも大塚さん以外に5~6人は聴きました。その中で、大塚さんの演奏は抜きんでていました。エッジが利いたベース奏法で、臨機応変の対応力も素晴らしく、横浜共演で、友金さんが大塚さんを抜擢したのも、彼の才能を評価してのことでしょう。

このCDでも、期待どおりの演奏を聴かせてくれます。大塚さんにとって、ニューヨーク訪問は今回が初めてだったのですが、帰国後の彼の演奏で、以前に増す凄みを感じ、鳥肌が立つような瞬間がありました。本場ニューヨークで、トップミュージシャンの演奏に接したことで彼が刺激を受け、更なる飛躍のきっかけになるとすれば、こんなに嬉しいことはありません。

<カール・アレンさんについて>
1980年代にフレディ・ハバードのバンドで頭角を現して以来、ジャズ界を代表するドラマーの一人として活躍しています。またジュリアード音楽院ジャズ科主任教授を長く務めた経験があり、後進の指導にも力を入れています。リズムキープを大事にしながら、メンバーの演奏を良く聴いて、グルーブ感を高めていく演奏スタイルは、ドラマーとしての役割を良くわきまえた正統派。今回のレコーディングでも流石と唸らせる演奏でした。

友金さんにとって、久々のレコーディング、大塚さんにとっては初めてのニューヨークでのレコーディング。二人の緊張感が高まる中で、レコーディングがスタートしました。演奏についての的確なアドバイスはもちろんのこと、親父ギャグで場を和ませるなど、大変貢献いただきました。

夢だったCD制作に関係された全ての皆様に、心から御礼申し上げます。

2018年9月

TOMMY’S RECORD代表 兼 TOMMY’S BY THE PARK店主 和田知行

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【曲目紹介】

生まれて初めてプロデューサーとして、レコーディングに立ち会いました。この至福の経験を思い出しながら、筆を進めます。

1) Memories of Bu (作曲:友金まゆみ)

Buというのは、アート・ブレイキーの愛称。いわゆるブラックムスリムとしてAbdullah Ibn Buhainaの別名を持っていますので、BuhainaからBuと呼ばれていたのではないかと思います。
友金さんは、アート・ブレイキーとの共演やピアノ連弾を通じて、リズム・ビートを叩き込まれ、演奏スタイルに影響を受けたそうです。
アート・ブレイキーとの思い出話は数多く聞きましたが、友金さんがセッションで、アート・ブレイキーに鍛えられているところに、マイルス・デイビスが「Bu!」と例のしわがれ声でやってきたというのがハイライト。凄い場面に立ち会っているのです。
演奏は印象的なピアノのイントロから、ドラム、ベースが加わったテーマを経て、ベースとピアノがそれぞれ軽快なソロをとり、再びベースとピアノが短いソロ交換を重ねながらテーマに戻ります。友金さんの自作曲の中でも、印象に残る乗りの良い曲なので、冒頭曲に選びました。
面白いのは、「Buの想い出」なのに、ドラマーはリズムキープに徹するところですね。

2) Grew’s Tune (作曲:Mulgrew Miller)

2曲目は、マルグリュー・ミラーが作曲したミディアムスウィングの曲で、彼自身も何度かレコーディングしている愛奏曲。明るい曲調で、演奏はテーマに続いて、友金さんのピアノがリードしながら3人が一体となりグルーブ感あふれる演奏で進み、ベースのロング・ソロを経てテーマに戻ります。
マルグリュー・ミラーは、1980年代にジャズ・メッセンジャーズのピアニストとして脚光を浴び、トップ・ピアニストの一人として活躍していました。2013年に57歳で惜しくも急逝。友金さんやカール・アレンさんは若い頃から交流があっただけに、ひとしきり思い出話をし、カール・アレンさんが、「CDが完成したら未亡人に贈らないとね」と語っていました。

3) I Wish She Were Still Here (作曲:友金まゆみ)

この曲は、友金さんが渡米後間もない10代の終わりに可愛がってくれた、お祖母様が亡くなった際に作曲したそうです。カール・アレンさんが「Golden Earringsみたいな感じでやろうよ!」と言っていた、哀愁感のあふれる16ビートの曲です。ピアノ、ベースの順に、それぞれ徐々に気持ちが高ぶっていくように雰囲気を盛り上げるソロを展開します。
これを引き継いで登場するドラム・ソロは、短いピアノのソロを挟んで約1分間、奇をてらわないシンプルなリズムを基調としたものですが、この曲のハイライトと言って良い素晴らしいものです。聴いていて癒されるというか、シンプルなリズムに浸っていることが気持ち良いのです。
その後、テーマに戻りながら、気持ちを静めるようにフェードアウトして行きます。

4) Old Folks (作曲:Willard Robinson)
ジャズバラードの名作として、インスト演奏だけでもマイルス・デイビス、ケニー・ドーハム、ベン・ウェブスター、デクスター・ゴードンなどジャイアンツ達の名演が多くありますが、このトリオの3人が一体となり、切々と繰り広げる演奏は、胸に沁みる演奏です。
研ぎ澄まされたピアノの一音一音、これに寄り添うブラシも流石カール・アレンさん。気分が高まったところで、引き継ぐベース・ソロも立派。再びピアノがテーマを奏でながらエンディングを迎えます。ピアノ・トリオによる「Old Folks」の名演です。

5) Sister Sadie (作曲:Horace Silver)
ホレス・シルバーの有名曲。特徴的なテーマはベースが中心となって奏で、その後は3人が短いソロ交換を行いながら一体となってスウィングしています。この曲では、様々なテクニックでソロを聴かせるドラムが要となって、ピアノとベースを鼓舞しスウィング感を盛り上げています。

6) 夕焼け小焼け(作曲:草川信)
ピアノとドラムのデュオの短い演奏です。ルバートでメロディーを奏でながら、途中からブギウギリズムとなる、米国生活が長かった友金さんらしい面白いアレンジ。思わずニヤリとしました。

7) Mr.T (作曲:友金まゆみ)
Mr.Tは、友金さんの師匠のマッコイ・タイナーのことです。強面のマッコイ・タイナーは普段も寡黙、孤高といった感じだそうですが、その反面、細やかな気遣いをしてくれる方だそうです。友金さんがリーダーとなったトリオ(ドラマーは、あのジミー・コブ)で、「バードランド」に初出演した際も、マッコイ・タイナーが友人、知人に声をかけ、満員にしてくれたそうです。
8ビートの明るい曲調で、この曲を聴いた時、情景的に言うと、天気の良い午後のニューヨーク五番街(日本でいうと表参道でしょうか)をウキウキとそぞろ歩く、といった感じがしました。テーマの後にピアノがリードしてソロをとり、ベース・ソロ、ドラム・ソロと続きます。このドラム・ソロも「I Wish She Were Still Here」のドラム・ソロに引けを取らない演奏です。

8) You Must Believe In Spring (作曲:Michelle Legrand)
ピアノとドラム(ブラシとマレット)はバックにまわり、大塚さんが、アルコでフューチャーされます。この曲は、作曲者のミッシェル・ルグランやビル・エバンスの名演など、ピアノ主体で演奏されるケースが多く、アルコでの演奏は珍しいと思います。現地でレンタルしたベースというハンディキャップをものともせず、若者らしく果敢に挑戦します。

9) Have You Met Miss Jones (作曲:Richard Rogers)
師匠のマッコイ・タイナーや、同じく師事したハンク・ジョーンズもレコーディングしている有名曲。ミディアムスウィングでピアノ、ベース、ドラムとソロをとりながら、一体となった勢いのある演奏を繰りひろげ、アルバムの掉尾を飾っています。

【友金まゆみさんのプロフィール】

・洗足学園音楽大学付属高校を経て、米国バークリー音楽大学(演奏法・作曲専攻)を奨学優待生として卒業。同大講師や全米ジャズ・ブラスバンド・コンクール審査員を経験。
・ジャズピアノの奏法は、マッコイ・タイナー、ハンク・ジョーンズに師事。
・在米期間は、ニューヨークを中心に20年近くに及んだ。その間に、ジョー・ヘンダーソンのバンドメンバーとしての活動、自己のトリオ・カルテットでニューヨーク「バードランド」「ブルーノート」などのジャズクラブへの出演、ニューヨーク・ジャズフェスティバルへの自己のカルテットでの出演などを経験。
・また、モダンジャズ・ドラマーの大御所アート・ブレイキーをはじめジミー・コブ、カール・アレン、ジェフ・ティン・ワッツ、ビリー・ドラモンド等のドラマーや、クリスチャン・マクブライド、ジェームス・ジーナス等のベーシストなど一流ミュージシャン多数と共演。
・現在は、地元横浜を中心としたライブ活動と音楽学校(友金学園)の代表としても活動。